2025.12.16スマレボストーリー
スマレボストーリー【成長編】 #5 新リーダーの苦悩と、コロナ禍の決断
こんにちは 株式会社スマレボ代表の米澤です。
前回、機械メーカーの事務員・竹下さんが、たった一人の「笑顔の実践」で職場の空気を変えた奇跡のお話をしました。
個人の意識が変われば、組織の空気も変わる。その確かな手応えを感じて、私は一度、この会社での任務を終えました。
それから、しばらく経ったある日のことです。
「米澤さん、また力を貸してほしいんです」
再び、あの大手機械メーカーから連絡が入りました。
今度のご依頼は、竹下さんのいた管理部門とは別の、会社の売上を支える最前線、「営業部」の強化でした。
真面目だけど、「個」でしか動かない営業たち
久しぶりに訪れた営業部は、静まり返っていました。 みんな真面目で、私が提案した個人の営業トレーニングにも一生懸命取り組みます。しかし、「チームで勝とう」という熱量が全く感じられないのです。
「自分の数字さえ達成すればいい」「言われたことはやります」という、どこか冷めた空気。
そんな保守的な空気に、誰よりも危機感を抱いていたのが、中途入社で着任した新リーダーの高橋さん(仮名)でした。
「米澤さん、どうしたらいいんですかね…。まるで時間が止まっているようだ」
アグレッシブな前職とのギャップに、高橋さんは頭を抱えていました。
そんな矢先、世界を一変させる出来事が起こります。新型コロナウイルスの流行です。
仕事が消えた春
2020年3月。ニュースで感染拡大が報じられ始めると、私の予定表は真っ白になりました
予定していた講演会はキャンセル。4月以降の研修も、クライアントから次々と「中止」や「無期限延期」の連絡が入りました。
「しばらく研修は無理ですね…」 仕方がないこととはいえ、売り上げが途絶える恐怖。 「ああ、これは当分、仕事がなくなってしまう…」 私も覚悟を決めざるを得ない状況でした。
しかし、ふとある言葉が頭をよぎりました。
「先のことを心配しても仕方がない。今、自分にできることは何だろう?」
ずっと避けてきたけれど、もう「オンライン」しかない。
私は4月に入ると、藁をも掴む思いでZoomのセミナーを受講し、必死でオンラインツールの勉強を始めました。
「こんな時こそ!」逆境での一本の電話
そんな中、私はおそるおそる、高橋さんへ電話をかけました。 他社はすべてストップしている。当然、ここも中止だろう。そう思いながら。
「他社では研修をストップしています。御社はどうされますか?」
すると高橋さんが、思わぬ言葉を発したのです。
「米澤さん! こんな時こそ、研修でしょ!」
耳を疑いました。訪問もできず、全員が在宅勤務になろうという、このタイミングで?
「高橋さん、本気ですか?」
「本気ですよ! 今まで出社していたメンバーが、在宅勤務になった。正直、何をさせたらいいか分からないし、どう管理していいかも分からなくて困ってるんです」
その言葉を聞いて、私の中で何かが繋がりました。 ピンチは、チャンスかもしれない。私はすかさず提案しました。
「じゃあ、こんなときこそ『緊急でないけど重要なこと』に着手するチャンスですよね? 以前から行いたいと思っていた、チームを一つにするための研修を行いませんか?」
「それいいですね!」 高橋さんの声が弾みました。
「今こそ、バラバラだったこのチームを一つにするチャンスになりますね!」
初めてのオンライン研修への挑戦
こうして、たった一社だけ、「やろう」と言ってくれた高橋さんとのオンライン研修が決まりました。
正直に言うと、それまでの私はオンラインに苦手意識があり、「研修は対面で行うからこそ情熱が伝わる」ということを言い訳に、オンラインでの研修を避けていました。
しかし、高橋さんの熱意ある言葉が、私の背中を強く押してくれたのです。
「やれることは、全部やろう」
コロナ禍という苦難がきっかけとなり、私は苦手だったオンラインと向き合うことを決め、新たな研修プログラムの開発に没頭しました。
そして、その準備を進める中で、私はある行動に出ました。
中止を伝えてきていた他のクライアントたちに、片っ端から連絡を入れたのです。
「メールや電話だけでは伝わらないことも、オンラインなら顔を見て話せます。今こそ、つながりが必要じゃないですか?」
「私が Zoom の設定からサポートしますから、一度ミーティングを体験してみませんか?」
すると不思議なことに、「そこまで言うなら」と体験してくれた会社から、「これならいける!」「オンラインでならお願いしたい」と、次々と研修の復活を決めていただけたのです。
その結果、4月に営業をかけまくったおかげで、5月には多くの研修が再スタートしていました。
この逆境を「危機」ではなく「チャンス」と捉えた、高橋さんとのこの一本の電話。 これが、この会社の未来を、そして私自身のコンサルタントとしてのスタイルをも、決定づけることになったのです。
次回、在宅勤務という逆境の中、私たちが始めた「未来志向のヒアリング」と「アファメーション」のお話です。
最後までお読みいただき、ありがとうございました!
