2025.07.16スマレボ創業ストーリー
#3 「常識」を壊す覚悟 ~“素人”集団を最強チームに変えた、たった一つのシンプルなルール~

こんにちは。株式会社スマレボ代表の米澤です。
前回は、無我夢中で掴んだ初めての契約についてお話ししました。不動産デベロッパーの会長から「月額30万円」のコンサルティング契約をいただき、8か月間売上ゼロだった私が、ようやくスタートラインに立った瞬間でした。
しかし、契約はゴールではありません。本当の勝負はここからです。
会長との約束は「女性営業を採用し、育て、定着させる」こと。
それは、当時の不動産業界の「常識」への挑戦でもありました。今回は、その奮闘の物語です。
「女性は、どうせ続かない」不動産業界の厚い壁
会長の会社に限らず、当時の不動産業界では、女性営業が定着しないのが当たり前でした。
「なぜ辞めてしまうのですか?」
現場でヒアリングを重ねると、理由は明らかでした。
「体力が持たないんです」
「とにかく、きつくて…」
自転車でのポスティング、真冬のティッシュ配り。そして「週休1日、朝9時から夜は9時、10時まで」という過酷な労働環境。これでは、意欲ある女性が応募してこないのも、働き続けられないのも当然です。
このままでは、何人採用しても同じことの繰り返しになる。
会長との約束を果たすには、まずこの「常識」そのものを壊す必要がありました。
そこで私は、一つの大胆な提案に打って出ます。
前例なき「B勤務」制度という賭け
「会長、女性が働き続けられる新しい勤務体系を作りませんか?」
私が提案したのは、従来の働き方を「A勤務」、そして新設する働き方を「B勤務」とする制度です。
A勤務: 月給は高いが、従来通り週休1日・長時間労働。
B勤務: 基本給は下がるが、週休2日・19時退社を徹底する。
もちろん、女性だけを特別扱いするわけにはいきません。あくまで選択肢として提示し、本人の意思で選んでもらう形を取りました。面接に来た女性には、まずA勤務の高い給与を提示しつつ、その働き方の厳しさを正直に伝えます。すると、ほとんどの女性が「B勤務で頑張りたいです」と選んでくれたのです。
また、モデルルームの受付として働いていた女性たちにも声をかけました。
「40代、50代になっても、この仕事をしているイメージって湧きますか?」
「営業スキルは、一度身につければ一生モノ。子育てで現場を離れても、いつでも復帰できる。人間力も上がる最高の仕事なんですよ。」
彼女たちの未来に本気で寄り添い、営業という仕事の可能性を伝えました。
こうして、私の元に数名の女性たちが集まってくれたのです。前例のない働き方を約束した、文字通りの“素人”集団。彼女たちの未来は、全て私の肩にかかっていました。
信頼を勝ち取った、一つの言葉
もちろん、このやり方を快く思わない人たちもいました。長年現場で戦ってきた男性社員からすれば、「外部から来たコンサルが、勝手なことを…」という思いがあったはずです。
特に、現場をまとめる営業部長は、当初は私に対して懐疑的だったと思います。
だからこそ、私は自分のスタンスを徹底しました。
「部長、私は営業を教えるプロですが、不動産のプロではありません。現場のことは、部長が一番よくご存じです。どうか、色々と教えてください」
決して上から教えるのではなく、常に部長にヒアリングし、指示を仰ぎ、報告を欠かさない。現場で働く人たちへの敬意を、何よりも大切にしました。「この人からは習いたくない」と思われたら、その瞬間に終わりだからです。
そんなある日のこと。私がいない朝礼で、営業部長が社員の皆さんに向けてこう話してくれたと、チームの女性営業がこっそり教えてくれたのです。
「正直、最初は米澤先生が外部から入ってくるのが嫌でした。でも、名刺交換の仕方一つとっても、自分もちゃんと習ったことがなかったと気づきました。自分も新たな気持ちで学ばせてもらおうと思っています。皆さんも一緒に学びましょう」
まだ、チームが何一つ結果を出せていない段階での、この言葉。
涙が出るほど嬉しかったのを、今でも鮮明に覚えています。
小手先のノウハウではなく、まず相手との関係性を築くこと。
この出来事を通じて、チームは本当の意味で一つになりました。
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さあ、いよいよ実践です。
常識破りの“素人”女性チームは、果たして本当にマンションを売ることができたのか。
その奇跡のような快進撃は、次回【第4話】でお話しします。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。