2025.10.09スマレボストーリー

【創業編】#10 二年間の航海、その終着点 ~感謝と反省、そして未来への羅針盤~

こんにちは。株式会社スマレボ代表の米澤です。

 

前回【第9話】では、50室のオーバーブッキングという絶体絶命の危機を、スタッフ全員の力で乗り越え、わずか3ヶ月で黒字化を達成した軌跡をお話ししました。

 

嵐のような船出を乗り越えた私たちの航海は、ようやく安定期へと入っていきました。しかし、その航海の終わりは、思いもよらない形で訪れることになるのです。

 

順風満帆な日々、そして理想の職場づくり

 

黒字化を達成してからのホテルの経営は、順調そのものでした。私たちが立てた「平日は海外の団体客、土日はオンライン販売」という戦略は見事に当たり、稼働率は安定的に向上。オーナーも想像以上の利益に喜んでくださっていました。

 

私が何より嬉しかったのは、利益が出たこと以上に、創業時に掲げた「女性が輝いて働けるステージを創造する」という想いを、少しずつ形にできたことです。

 

私が目指したのは、スタッフが互いを尊重し、気持ちよく働ける職場でした。そのため、採用面接では、後に会社の行動指針ともなる3つのルールを必ず伝えていました。

 

それは、「明るく喜んで働く」「できない理由より、できる方法を考える」「人の悪口を言わない」というものです。「このルールは少し幼稚に聞こえるかもしれませんが、破っているのを見つけたら、私が直接注意しに行きますからね」と。

 

こうした取り組みの結果、他人のことを思いやれるメンバーが自然と集まり、職場はいつも明るい雰囲気に包まれていました。

利益も出て、チームの雰囲気も良く、まさに理想的な状態が続いていたのです。

 

突然の契約終了通告

 

しかし、その穏やかな日々は、二年という月日を経て、突然終わりを告げます。

ホテルの賃貸契約更新を控えた2月のある日、オーナーから告げられたのは「契約更新はしない」という、非情な通告でした。

 

実は、その半年ほど前から、オーナーから更なる売り上げUPを求められていたのです。

「もっと利益を上げろ」

「昼間の空いている部屋も使って、さらに売上を作れ」

 

その要求に応えることは、スタッフに過酷な労働を強いることにつながりかねませんでした。私は、東京へ営業に行ったり、特別室を改装して単価を上げたりと、別の方法で利益を上げる努力を重ねていましたが、オーナーが満足する結果には至っていなかったのです。

 

根底にあったのは、経営方針の決定的な違いでした。

利益を第一に追求するオーナーと、従業員の働きがいを大切にしたい私。その溝は、いつの間にか修復不可能なほど深くなっていたのかもしれません。

 

感謝と反省、そして未来への誓い

 

「わかりました。これまで、本当にありがとうございました」

 

契約終了を告げられたとき、私はその場で即答し、深々と頭を下げました。

驚きよりも「やはり、こうなったか」という予感めいたものがあったからです。

 

もちろん、悔しさがなかったわけではありません。

ここまで一緒に頑張ってくれたスタッフたちの顔が浮かび、申し訳なさで胸が張り裂けそうでした。

しかし、今振り返れば、この結末は私自身の至らなさが招いたものでもあったのです。

 

オーナーの要求に対し、私は「スタッフに負担をかけたくない」という想いから、正面から向き合うことを避けていました。

オーナーの要求を上回るような代替案を、経営者として提示することができなかった。そこに、私の甘えと力不足があったのです。

 

その後、スタッフ一人ひとりに正直な気持ちを伝えました。ほとんどのメンバーがホテルを去ることになりました。

 

こうして、二年間にわたる私のホテル経営者としての航海は、幕を閉じたのです。

この二年間は、私の経営者人生において、何物にも代えがたい財産となりました。あんなにも大きな事業を、素人だった私に任せてくれたオーナーには、今でも心から感謝しています。

 

この経験で得た数えきれないほどの学びと反省は、私のコンサルタントとしての未来を照らす、確かな羅針盤となりました。

 

私の物語は、まだまだ続きます。

次回からは、また新たな挑戦の物語が始まります。

最後までお読みいただき、誠にありがとうございました。