2025.11.06スマレボストーリー
スマレボストーリー【成長編】 #2 「嫌われ者」の彼女が、会社を救った日(製造業)
こんにちは!株式会社スマレボ代表の米澤です。
前回、良かれと思って始めた社員ヒアリングで、会社への不平不満を噴出させてしまった私。社長はショックを隠せず、私も自分のやり方のまずさを痛感していました。
噴出した不満のマグマの中でも、特に問題視されていたのが、二人の人物でした。
一人は、社長が「扱いにくい」とこぼした、創業メンバーのベテラン女性部長。
そしてもう一人が、多くの社員から「社長にえこひいきされている!」と嫉妬されていた、若手の男性社員です。
今回は、会社をバラバラにしかけていた、この二つの問題の真相に迫ります。
「嫌われ者」の部長の、意外な本音
社員たちの意見を聞く限り、その女性部長は、周りにキツく当たり、自分のやり方を押し通す、まさに「嫌われ者」の典型でした。
「よし、まずは本人と直接話してみよう」
正直、少し身構えながら彼女との面談に臨みました。
しかし、私の目の前に座った彼女から語られたのは、全く予想もしない言葉でした。
「私は、この会社が好きなんです。だから、もっと良くしたいだけなんです…」
堰を切ったように、彼女は話し始めました。 創業当時、社長と二人三脚で無我夢中で働いた日々のこと。会社が大きくなるにつれて、昔のようにはいかなくなったことへの寂しさ。そして、自分のやり方が古いことは分かっているけれど、どうすればいいのか分からない、という苦しみ。
彼女は、会社を愛する気持ちが人一倍強いがゆえに、必死だったのです。
しかし、その表現方法が不器用で、周りにはただの「口うるさい人」としか映っていなかった。他の社員たちが社長に彼女の悪口を直接吹き込んでいたことも、事態をさらに悪化させていました。
さらに話を聞くと、驚きの事実が分かりました。
他の社員たちが「あの人、いつもサボっている」と噂していた時間、彼女はたった一人で、厄介な取引先との値上げ交渉を一手に引き受けていたのです。
会社の利益を守るために、誰にも見えないところで泥をかぶっていたのでした。
「えこひいき」が生んだ、最悪の結末
そして、もう一つの大きな問題が「えこひいき」でした。
社員たちの不満の的になっていたのは、社長が将来の後継者にとまで考え、目をかけていた30代の男性社員。社長の彼への期待は、いつしか「盲目的な愛情」に変わり、周りが見えなくなっていました。
その歪みに、いち早く気づいていた人たちがいます。
そう、例のベテラン女性社員をはじめとする、古株の女性たちでした。
「社長、あの人のやってること、どうもおかしいですよ」
「利益も出ていない取引ばかりなのに、なんで彼だけお給料が上がるんですか?」
彼女たちは、会社の利益率をしっかり見ていました。その訴えは、会社を思う「愛社精神」からの、勇気ある警告でした。
しかし、社長は「また文句を言っているのか」と、まともに取り合おうとしません。
「社長、本気で見てください!これは会社への裏切りですよ!」
彼女たちの鬼気迫る訴えに、ようやく重い腰を上げた社長が彼の取引を調べた結果、最悪の事実が判明しました。
彼は、会社の金を横領していたのです。
失敗から学んだ、本当の「仕組み」の意味
社長が「問題児」だと思い込んでいた部長こそが、会社を救うキーパーソンでした。そして、社長が信じていた若手社員は、会社を裏切っていた。
この一件で、社長は「俺は、何も見えてなかったんやな…」と、自分の過ちを深く反省しました。
原因は、この会社に明確な「仕組み」がなかったからです。
お金の流れをチェックする体制もない。頑張りを正しく評価する基準もない。社長の「どんぶり勘定」が、不正と不満の温床となっていたのです。
「米澤さん、もう腹を括った。給料も評価も、全部ちゃんと作り直そう」
社長のその一言で、私たちは会社の心臓部である人事評価制度の改革に着手しました。
しかし、私が蒔いてしまった不満のタネが、ここで最悪の形で爆発します。いわば「給料大暴動」です。
研修を開けば、「どうせ何も変わらないんでしょ!」と怒り出す社員たち。
給与体系を変えようとすれば、「私たちの頑張りを分かってない!」と猛反発。
なんと、以前退職した給与担当の社員が、最後に全員の給与を公開して辞めていたこともあり、給与に関してはみんな大きな不満を抱えていたのです。
私の「不満は何ですか?」という最初の聞き方が、社員たちを「会社に物申す評論家」にしてしまっていたのです。 ただ不満を聞くだけではダメだった。どうすれば会社が良くなるかを「一緒に考える仲間」になってもらわなければならなかったのに…。
この大混乱を乗り越え、社長と社員が何度も話し合いを重ねた結果、ようやく「全員が納得できる評価制度を作ろう」という一つのゴールに向かい始めました。
ただ、当時の私には、専門的な人事評価制度を一から作り上げるスキルがなかったため、 知り合いの社労士にバトンを渡し、この会社のコンサルティングを終えることになったのです。
この会社での大きな失敗に、一時は茫然となりました。
でも、この経験が「思いだけでは組織は動かない。人を活かし、会社を守るためには、血の通った『仕組み』が絶対に必要だ」というホテルでの学びを、本当の意味で私の血肉に変えてくれました。
このときの悔しさがあるからこそ、現在ではスマレボパートナーの様々な専門家と共に、制度設計から運用まで一貫してサポートできる体制を整え、会社の組織作りを行えるようになったのです。
失敗は、最高の学び。 私の「成長編」は、まだまだ始まったばかりです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました!
