2025.11.13スマレボストーリー
スマレボストーリー【成長編】 #3 「俺は変わらん!」ワンマン社長に砕かれた、3ヶ月の挑戦(建築会社)
こんにちは!株式会社スマレボ代表の米澤です。
ホテル経営での大きな挫折を経て、「思いだけではダメだ。会社を守るには『仕組み』が必要だ」と痛感した私。コンサルタントとして、少しずつ自信もつき始めていた、そんな頃でした。
ある日、経営者の大先輩から、一本の電話がかかってきました。
「米澤くん、ちょっと助けたってほしい会社があんねん。社員がな、入れても入れても辞めて困ってるらしいわ」
ご紹介いただいたのは、社員40名ほどの建築会社の社長。一代で会社を築き上げた、60代の叩き上げの経営者です。
社長の悩み「幹部が育たず、事業承継ができない」
社長室に通された私に、社長は熱っぽく語りました。
「わしもええ歳やから、そろそろ会社を任せられる幹部を育てたいんや。やけど、どうにも育たん!」
会社には二人の幹部候補がいるとのこと。
一人は、仕事はバリバリできるが「もう辞めたい」と何度も言ってくる。 もう一人は、人柄はいいが、どうにも仕事がルーズで任せられない。
「この二人を、米澤さんの力でなんとか一人前に育ててくれんか」
社長の期待を背負い、私はさっそく幹部二人との面談を始めました。…しかし、そこで聞いたのは、社長の言葉とは全く違う、衝撃的な現場の声だったのです。
幹部の本音「原因は、100%社長です」
重い口を開いた二人の幹部は、まるで示し合わせたかのように、同じことを言いました。 「この会社の問題は、全部社長です」
聞けば、社長は「任せる」と言いながら、幹部を飛び越えて現場の社員に直接指示を出し、彼らが決めたことを「そんなんアカン!」と鶴の一声でひっくり返してしまう。
まさに典型的な「ワンマン経営」でした。
「僕らがいくら育てても、社長の一言で社員が辞めていくんです…」
「社長が変わらない限り、この会社は絶対に変わりません」
仕事ができる幹部は、すでに他社からの引き抜きにも応じる準備ができており、ただ現場への責任感だけでギリギリ残っている状態。人柄のいい幹部は、社長と板挟みになり、すっかり疲弊していました。
これは、幹部育成の問題ではない。社長自身の問題だ——。私は、この会社の本当の課題を、社長に伝えなければならないと覚悟を決めました。
「俺に変われって言うてんのか!」
とはいえ、プライドの高いワンマン社長に、いきなり「あなたが原因です」とは言えません。そこで私は、社長に「コーチング」を体験してもらうことにしました。
社員の話を「聴き」、彼らの自主性を引き出す関わり方を、まず社長自身に知ってもらおうと思ったのです。
しかし、この提案が、最悪の事態を引き起こしてしまいました。
コーチングの体験セッションが終わった直後、社長は私を呼びつけ、こう言い放ったのです。
「なんや、あれは!俺に、あんな甘っちょろいことせえって言うてんのか!」
「…社長の関わり方が、社員さんのやる気を引き出す鍵になるんです」
「俺に変われって言うてんのか!」社長の怒りは頂点に達していました。
「俺はこのやり方で会社をデカくしてきたんや!俺がこの怖いのをやめたら、会社は崩れる!もうええ、お前には頼まん!俺が全部やる!」
こうして、私のコンサルティング契約は、わずか3ヶ月で、あっけなく打ち切られてしまったのです。
痛感した「経営者」の孤独と、自分の未熟さ
良かれと思った提案が、社長のプライドを傷つけ、関係を完全に壊してしまった。
今思えば、当時の私には、社長の「孤独」を理解する力が足りていませんでした。
「社員が育たない」という悩みの裏にあった、「誰にも任せられない」という社長の不安と焦りに、寄り添うことができなかったのです。
「仕組み」の大切さは分かってきた。でも、その仕組みを動かす「人」、特にトップである「経営者」の心を動かすには、どうすればよかったのか。当時の私には、まだその答えが分かっていませんでした。
この痛烈な失敗が、私に「本当の組織づくりとは何か」を、もう一度ゼロから問い直させてくれることになるのです。
次回、この失敗の次に私が出会った、「機械メーカー」での新たな挑戦のお話です。
最後までお読みいただき、ありがとうございました!
